バットで戦う(金属)バットウーマン
皆が思うあのヒーローではなく、バットを武器に戦う超イカしたヒーローだ。
愛用のバットは、打てば打つほど輝きを増すという都市伝説付きの、ごく普通の金属バット。
しかし、彼女の手にかかれば、それは犯罪者をノックアウトする最強の武器へと変貌する。
特殊能力?ええ、ありますとも。
驚異的なリストの強さと、どんな悪党の頭にも確実にフルスイングを叩き込める、百発百中のバッティングセンス。
そして、何より「バットを武器にする」という一点突破の強い意志こそが、彼女を真のヒーローたらしめている。
彼女の武勇伝は枚挙にいとまがない。
聞けば昔は地元のイカれた不良少女で、警察のご厄介にもなっていたという。
その内容は、もっぱら「空き地に不法投棄されたゴミを、バットで全てホームランにして処理した」とか、「夜中に公園の遊具でバッティング練習をしていたら、金属音が響き渡りすぎて近隣住民を叩き起こした」とか、むしろ迷惑行為のレパートリーだったらしいが、その頃から既にバットを握りしめていたのだ。
さあ、そんな彼女が一体どうやって、この街の平和を守る(そして時々誤って街灯も倒すし看板も破壊する、自転車も破壊する)バットウーマンへと覚醒したのか、その壮絶な物語は、まだ始まったばかりだ。
最大の敵
彼女のバットが初めて正義のために振るわれたあの夜、バットウーマンは街の地下深くに、まるでゴキブリの巣のように蠢く巨大な闇、その名も恐ろしき「ナイトメア・シンジケート」の存在。
彼らはそこらのチンピラが束になっても敵わない、インテリ悪党集団。その活動は、もはや「犯罪」というより「悪の総合商社」といった方がしっくりくる。
都市の経済をまるで自分の貯金箱のように扱い、政治家や警察内部にまでその悪の手を巧妙に、そしてヌルヌルと伸ばす、まさに「悪のタコ足配線」を地で行く組織である。
シンジケートの首領は、通称「マエストロ」。彼の名前を聞けば、街の裏社会の人間は、恐怖で思わず小便を漏らすという噂も(本当かどうかは定かではないが、雰囲気は出る)。
表向きは天使のような笑顔で慈善事業に勤しみ、貧しい子供たちに寄付をするフリをしながら、裏では悪魔のような顔で世界征服の計画でも練っているかのような、とんでもない二面性を持つ男である。
彼の武器は、バットウーマンのような豪快な一撃ではない。むしろ、人間の心に巣食うちっぽけな弱さや、抑えきれない欲望を、まるで高性能な心理学者か詐欺師のように巧妙に利用する、悪魔的で、それでいてどこかセコい策略である。
彼にかかれば、あなたの「ちょっとだけサボりたい」という気持ちさえ、世界を揺るがす犯罪の片棒を担がされるかもしれないのだから、恐ろしい。
とにかく雑魚を叩きのめす毎日
バットウーマンの「正義のバット」は、今日も街のどこかで唸りを上げる。彼女の毎日は、まるでバッティングセンターの特打ち練習だ。
公園でタバコのポイ捨てをするオヤジには、吸い殻をバットで弾いてポイ捨てした本人に返却。もちろん狙いは精密だ。
スーパーで万引きを働く若者を見かければ、レジを通り過ぎる瞬間にバットで商品をかっ飛ばし、元の棚へと見事な「ライナーバック」を決める。店員は驚き、犯人は絶句、バットウーマンは涼しい顔で去っていく。
しかし、彼女のバットは「悪」だけを叩きのめすわけではない。
たまには正義のついでに、思わぬ被害を撒き散らす。
「道路のゴミが目障りね!」と、不法投棄されたゴミ袋をバットでフルスイングすれば、ゴミはホームラン級の飛距離で飛び、お隣のマンションのベランダを直撃。
「犬が木に引っかかってる!助けなきゃ!」と、迷子の犬を助けるためにリードを叩き落とせば、勢い余って木が根元からへし折れてしまう。
街の住人たちは、そんな彼女を「街の守護神」と呼ぶか、「公害」と呼ぶか、いつも迷っている。
だが、彼女がバットを握りしめている限り、この街から退屈な日々が消え失せることはないだろう。
そして今日も、彼女のバットは鈍く輝きを増していく。その輝きの正体が、単にバットが傷だらけになり、塗装が剥がれて金属の地肌がむき出しになっているだけだとは、誰も気づかないフリをしている。