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清楚学園のバニーガールクラブ

清楚学園のバニーガールクラブ




私立桜花女学院――通称「清楚学園」。
その名は伊達じゃない。白亜の校舎、手入れの行き届いたバラ園、そして何より、在籍する生徒たちの品位と学業成績は、国内屈指と謳われていた。
スカート丈は膝下まで、スマホは校内持ち込み禁止、門限は午後6時。
規律は厳格を極め、些細な違反ですら大問題となる。そ
んな学園に、まさか「バニーガールクラブ」などというものが存在しようとは、誰が想像できただろうか?

学園の地下深く、長らく使われていなかった旧資料室の奥。
埃まみれの古びた扉の向こうに、その秘密のクラブはひっそりと息づいていた。
優雅なティーカップの代わりにシェイカーが振られ、古典文学が並ぶ書棚の代わりに、きらびやかな衣装がハンガーに揺れる。
そして何より、普段は優等生の顔で微笑む彼女たちが、耳付きのカチューシャをつけ、しなやかなバニースーツに身を包んで、そこで……。

これは、清楚を義務付けられたお嬢様たちが、秘かに夢見る自由と、少しばかりの冒険を求める物語。
あるいは、学園の常識を覆す、ある少女たちの反逆の記録なのかもしれない。
そのすべては、あの日、私が偶然その扉を開けてしまったことから始まったのだから。

生徒会長の憂鬱



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生徒会長であり、バニーガールクラブ部長は今日も憂鬱だった。

今日も彼女は完璧な一日を送っていた。
朝の挨拶から始まり、生徒会の定例会議、教師との打ち合わせ、校則違反の是正指導。
そのどれもが淀みなく、寸分の狂いもなくこなされていく。
誰もが憧れる、まさに学園の象徴。
揺れるプラチナブロンドの髪はいつも手入れが行き届き、澄んだ青い瞳は一点の曇りもなく、その立ち居振る舞いはまさに「清楚」という言葉を体現していた。

しかし、その完璧な笑顔の裏で、彼女の心は常に綱渡り状態だった。
生徒会室の硬質なデスクに肘をつき、山積みの書類を前に深いため息をつく。
これほど多忙なのは、生徒会長としての職務だけが理由ではない。
彼女にはもう一つの、誰にも明かせない顔があった。そう、「バニーガールクラブ部長」としての顔が。

引き出しの奥に隠された、光沢のある黒いサテン生地が、ふとした拍子に指先に触れる。それは、先週調達したばかりの新型バニースーツの端切れだった。
(全く……どうして私がこんなことを……)
ため息は再び、今度は深々と漏れる。
学園の規律を守る生徒会長が、その裏で最も破廉恥とされかねない秘密のクラブを運営している。
このギャップは、時に彼女自身をも苦しめた。クラブの活動資金、新しいメンバーの勧誘、そして何よりも、この秘密が学園当局に知られた時のことを考えると、胃の奥がキリキリと痛んだ。

だが、あの地下室で、普段は模範的なお嬢様たちが、バニースーツを纏い、無邪気にはしゃぐ姿を思い出すと、彼女の胸に微かな、しかし確かな温かさが灯る。
それは、清楚という名の檻に閉じ込められた少女たちが、ほんの一時だけ羽を広げられる、唯一の場所だった。
その自由を、楽しさを、この手で守り続けたい。たとえ、それが生徒会長としての己を裏切る行為だとしても。

もう一度、深く息を吐き出すと、立ち上がった。
時計は午後五時を指している。門限まであと一時間。今夜もまた、生徒会長の誰も知らない夜が、始まろうとしていた。
地下へと続く、古びた扉の向こうに、彼女の本当の顔が待っている。

地味目な新入部員



私立桜花女学院に籍を置く一介の生徒であり、その学園の数多の才色兼備な「お嬢様」たちの中に埋もれてしまえば、まるで砂粒のように目立たない存在だった。
常に成績は中の上、服装は校則通り。誰かに話しかけられれば控えめに微笑み、そうでない時は、壁の花のように静かに過ごす。
それが私の学園生活だった。

ある日の放課後、私は忘れ物を取りに、普段は立ち入らない校舎の旧棟へ向かっていた。
使い古された歴史資料が眠る薄暗い通路を辿り、最奥にひっそりと佇む一室。
そこは、もう何年も誰も使っていないと噂される、旧資料室だった。
なぜか妙に気になって、埃を被った扉の隙間から覗き込んだ時、微かな音と、甘く濃厚な香りが漏れ聞こえてきた。
好奇心に抗えず、軋む音を立てて扉を押し開けた、その瞬間――。

目に飛び込んできたのは、私の知る「清楚学園」とはあまりにもかけ離れた、眩いばかりの光景だった。
薄暗い旧資料室は、まるで秘密の舞台へと変貌を遂げている。
ミラーボールが天井で煌めき、どこからか聞こえるジャジーな音楽に合わせて、数人の生徒がしなやかに身をくねらせていた。
彼女たちが身につけていたのは、漆黒のバニースーツ。
普段は膝下丈のスカートに身を包む清楚な少女たちが、うさぎの耳を揺らし、網タイツの脚を露わに、艶やかに踊っている。

私は息を呑んだ。

この学園の厳格な規律を象徴するような生徒会長、あのプラチナブロンドの髪を揺らす完璧な美貌の持ち主が、まさか、まさか、その中心で、最も妖艶なバニースーツを纏い、私の方を振り返ったのだ。
その澄んだ青い瞳は、普段の生徒会長としての顔とは違う、どこか挑発的で、しかし愉しげな光を宿していた。

「あら、見つけちゃったの?」

生徒会長の声は、普段の厳かな響きとは異なり、どこか甘く、悪戯っぽい響きを持っていた。
私はただ立ち尽くすばかりで、言葉を発することもできない。この学園で最も規律を重んじるはずの彼女が、最も破廉恥な秘密のクラブの部長だったなんて。
私の地味な学園生活は、この日、この扉を開けたことで、音を立てて崩れ去った。
そして同時に、得体の知れない、しかし抗いがたい引力に、私の心は強く引き寄せられていた。これは、私の「地味目な」人生に、初めて訪れた、とてつもない冒険の始まりだったのだ。

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